リアル

8月24日からパラリンピックが始まりましたね。

開会式もなかなかよかったのではないでしょうか。

テーマが一貫していたというか、片翼の飛行機の飛び立つところは感動しました。

演じていた女の子も可愛かったですね。

普段、仕事柄、障がいのある方々と関わる機会もあります。

昔から身近にいたので、「障がいがあるのに」あんなに頑張っていてすごい、という感覚はあまりありません。

もちろん、自分たちであれば簡単にできることが障がいのためにできない・やりづらいけど、何らかの工夫を凝らしてできていることには凄いなと思います。

「頑張っている姿」に感動をして涙を流す、という感動ポルノとしてではなく、オリンピックと同じく、純粋にアスリートとして最高のパフォーマンスを発揮しようとしている選手たちの姿をしっかりと応援したいと思いますし、スポーツとして楽しんで観戦しています。

さて、もうパラリンピックも終盤に差し掛かってきていますが、日本選手団の活躍も毎日のようにニュースなどで報道されていますね。

競技中のライブ映像を民放で放送していないのは残念ですが・・・。まぁ例年のパララリンピックと比べたらマシな方なのかな。

パラリンピックの競技と聞いて皆さんが思い浮かべるのは何でしょう?

私は、これまでいろんな競技に関わらせていただく機会があったのですが、やはり花形競技とも言える代表的なスポーツといえば、「車いすバスケットボール」かなと思います。

男子は昨日(9月1日)にオーストラリアに勝ってベスト4入りを決めました。

今回の男子チームは強いですね〜。

そんな「車いすバスケットボール」を題材にした漫画があるのをみなさんはご存知でしょうか?

井上雄彦先生の「リアル」という漫画です。

今回はその「リアル」の紹介をしていきましょう!

概要

車いすバスケットボールの話なので、もちろん登場人物の多くは車椅子を利用している障がい者です。

主人公が一人という設定ではなく、中心人物となるキャラクターが3人います。

この主要な登場人物たちについては後ほど説明します。

それぞれの人生を歩んでいる中、車いすバスケットボールに出会ったこの登場人物たちが、挫折や困難に立ち向かっていくことを描いているのですが、単にスポーツ漫画というものではなく、障がいのこと、競技のこと、人間関係、人生観などが「リアル」に描写されています。

3人それぞれの視点から物語が展開されていきますが、その3人が離れたり、交差したり・・・

それぞれのストーリーが見られてかなり引き込まれます。

また、私は前述したように、これまでにも障がいのある方に接する機会があったので、生活や普段の様子のイメージはあるのですが、ここもかなりリアルに再現されていると思います。

井上先生といえば、スラムダンクやバガボンドの作者として有名ですが、車いすバスケットボールや障がい、選手たちの生活、取り巻く環境について、相当勉強されていると思います。本当、尊敬します。

そして、一般的には障がいは、どこかしら「触れにくいもの」でもあると思うのですが、それをメインに扱っている、しかも漫画のなかで描写することによって、読む人たちに理解しやすくしている、より身近なところに感じられるようになっているところもすごいなぁと思います。

内容としては、スポーツの話というよりは、スポーツと、それを取り巻く様々なことが多く扱われています。非常に勉強になりますし、今やっているパラリンピックを見る上でもこういうバックグラウンドを知っておくと、またより一層興味深く見れますね。

2001年から現在15巻まで発売しています。1年に1巻のペースで発売されていましたが、作者の井上先生と車いすバスケットボール連盟の間でちょっとしたゴタゴタがあり、2014年で一回ストップしていました。その後ようやく2020年に15巻が出たんですね〜。よかった〜。

主要な登場人物

  • 戸川清春(とがわ きよはる)

19歳の主人公。車いすバスケットボールチームの東京タイガース所属。ポジションはガード。

持ち点は4.5点(※)

※車いすバスケットボールは、選手の障がいの重さを点数(持ち点)で表しており、コート上でプレーしている5人の選手の持ち点の合計が14.0点以内に収まるようにチームを編成しなければなりません。最も障がいの重い人は1.0点、最も障がいの軽い選手は4.5点で、0.5点刻みに8段階に分かれています。つまり、障がいが軽い人ばかりでチームを編成することはできないルールになっていて、チーム同士の公平性を保つ「クラス分け」というルールがあります。

幼い頃に母親を亡くした清春は、元ピアニストの父に育てられます。自分はピアノが好きというわけでもなかったのですが、ピアニストを諦めた父から熱心な教育を受けて育ちます。

中学の時に短距離走に出会い、父の反対を押し切って陸上部に入部。その後、才能が開花し、全国大会にまで進む有望選手になります。

しかし、徐々に膝に激痛を感じるようになり、決勝レース中にその症状が悪化して走れなくなってしまい、病院で「骨肉腫」であると診断を受けます。

そして、右膝から下を切断する手術をし、義足と車椅子での生活となって、一時引きこもりとなってしまいます。

その後、虎という人物やヤマという人物と出会い、車いすバスケットボールにも出会います。その他、父の支えや同級生の安積との再会などで気持ちが切り替わり、左胸にタトゥーを入れて車いすバスケットボールに打ち込むようになっていきます。

車いすバスケットボールを始めたことにより、次に紹介する「野宮朋美」と出会い、障がいがある自分に全く気にせずに、図々しく接してくる野宮に感化され、それまで弱小だったチームを変えようと本気で行動を起こします。

今はタイガースのエースとしてチームを牽引し練習に励んでいます。

  • 野宮朋美(のみや ともみ)

18歳。西高校でバスケをしていた。背番号は8。丸坊主にひげ(最初はアフロ)という強面の風貌だが、性格はかなり繊細。

繊細であるが粗暴でもあるため他者と喧嘩にもなりやすい。野宮は母子家庭で育っています。

バスケに熱心に打ち込み、練習も基礎を欠かさず行い、優勝を目指していたが、努力を嫌うチームメイトの高橋(後述)たちと対立して関係は良くありませんでした。

夜に街でナンパした山下夏美をバイクの後ろに乗せ交通事故を起こし、夏美を脊髄損傷(下半身不随)にしてしまいます。そして高校を退学。

夏美が自分が乗せたバイクの交通事故によって障がい者になってしまったことに罪悪感をもち続けるが、戸川清春との出会いで自分を変えるため、免許を取りに行ったり、バイトも始めるが問題を起こして解雇されるなどなかなか続きません。

そして清春の所属する東京タイガースの「ご意見番」と自ら名乗って練習に参加したり、試合の応援に駆けつけるようになり、タイガースの選手たちの姿を見て、もう一度自分もバスケットをしようと、プロバスケチームのトライアウトに臨みます。

最終選考まで残ったものの採用の連絡はなく、その後、バスケから遠ざかってしまいます。

その後も色々とあって自分のことを見つめ直すという時間が続きます。

  • 高橋久信(たかはし ひさのぶ)

17歳(〜18歳)。野宮と同じ西高校のバスケ部。勉強に運動に、なんでもできるいわゆる天才タイプ。しかし、プライド・自尊心が高く、自らを「Aランク」として周囲の人もランク付けする癖、見下す癖があります。この性格は物語が進むにつれて変化していきます。

周囲からも一目置かれる存在でしたが、ある日、盗んだ自転車に乗っている時にトラックに衝突する事故に遭い、脊髄損傷による下半身不随になってしまいます。

高橋は幼い頃から父の影響でバスケットをしており、父との1 on 1などもしていましたが、母親との教育方針が合わず父親が家を出てしまいます。母子家庭になったショックなどもあり、上述の性格(ランク付けするなど)になってしまったようです。

もともと西高校のバスケ部キャプテンですが、野宮と違い努力を嫌うタイプ。もともとは野宮とも打ち解けていたのですが、父親が出て行ってからは、高橋派、野宮派などと勝手に名付けて関係も悪くなっていきました。

でも実は高橋派のメンバーからも嫌われていたので、事故に遭って入院している時も仲間はお見舞いにはきませんでした。

入院中は両親、彼女のふみか、同じ施設に入院している花咲や白鳥といった登場人物たちと共に様々な葛藤をしながら現実に向き合っていくようになります。

その後、車いすバスケチーム「調布ドリームス」の永井と出会い、入部します。車いすの操作が思った以上に難しく、これまでなんでもできていた高橋はそれにイライラを隠せませんが、自分の障がいを受け入れ、基礎となる車いすのチェアスキルからしっかりと取り組んでいくようになります。

漫画の情報

作者は井上雄彦先生。

出版社は集英社で、ヤングジャンプにて時々連載しています。

掲載される時はだいたい表紙にデカデカと戸川か野宮か高橋の絵が載っていることが多いので、見つけたらすぐに読んでます。

2020年11月19日までに15巻が発売されています。

まとめ

パラリンピックも盛り上がってきているところで、今回は車いすバスケットボールを軸に、3人の主要人物の人生を描く「リアル」を紹介しました。

ここで紹介しきれない内容がいっぱいあります。

バスケからは離れますが、高橋と同じ施設に入所している白鳥はプロレスラー。同じ脊髄損傷でも損傷した場所が違うので、高橋よりはやや障がいが軽いですが、立って歩くことが難しい中、リングに復帰しようとします。その姿には熱いものを感じました。

確かプロレスラーの高山選手も頸髄損傷でリハビリを頑張っている姿をテレビで拝見したことがあります。

前と同じ形でリングに復帰することは難しいでしょうが、なんらかの形で関わって行って欲しいなと思います。

話を戻します。

今、パラリンピックではいろんな障がいがある選手たちが戦っています。

こういった競技場面だけではなかなか見ることができない背景を知ってから観戦するとさらに入り込んで見ることができますね。

障がいがある人たちの苦悩、それを支える人たちの姿、周りの人たちの気持ちなど、いろんな「リアル」を見ることができる漫画ですので、ぜひご一読ください!

井上先生の漫画なので、絵も綺麗で読みやすいですよ〜。

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